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〜夜明けの遊び〜 第1章 手に入れた穏やかな日常

  • 執筆者の写真: eco
    eco
  • 2020年4月14日
  • 読了時間: 3分

 急に、独りになりたくなった。

特別なにかあったわけではないが、とてつもなく孤独が恋しくなった。

寝静まっている家族を見つめ、愛おしさを感じると同時に、ここから逃げ出したいと願ってしまう自分がいた。

悶々とした夜、眠れないまま3時を過ぎようとしていた。

(このままじゃいけない…外に出よう。バイクで海に行って…煙草でも吸おう。)

机に置き手紙をして、鍵と煙管を持って玄関を出た。

 肌寒い。空気がシンと沁みる。まだ太陽の気配はしない。

愛車のCBR250rは静かに眠っていた。もうここ数年間ほとんど乗っていない。

ヘルメットを被り、手袋をはめ、音が響かないところまで押して歩いてからエンジンをかける。軽く点検してから顔を覗くと、ドラゴンのようなその眼から「走りたい」という力強い意志を感じた。

その声に応えるべく、わたしは顔を撫でシートに跨った。

ヴゥンッと唸るこのじゃじゃ馬ちゃんとの想い出は、数え切れないほどある。

遅れた青春を取り戻すように、いろいろなところへ出かけた。

どれも自由を象徴する楽しい想い出ばかり。

しかし、バイクに乗ると寂しさも感じるのであった。

それは、こうして独りで逃げ出したくなる夜を共にしてきたからだろうか。

 海まではそう遠くない。10分ほどして、お気に入りのベンチがある海辺の秘密基地に来た。

秘密基地といっても、人目につかないだけの小さな空き地だ。独りでよくここに来る。

ベンチはガタついていて、いつ壊れてもおかしくない。

だが、それも心地よいほど心が荒んでいた。

日々生きているだけで褒めてほしいようなわたしが家庭を持って奮闘しているのは、自分で選んだ道とは言え、崇め讃えられたいほどのことだった。

 小さなレッグバッグには、煙管やマッチが入っている。

実は密かに嗜んでいた。だが、子どもや夫の前では吸わないと決めていたので、知る人は数えるほどしかいない。

小さく畳んだ紙の中には、自分でブレンドしたシナモンなどの薬草が入っている。

つまり、煙草といってもニコチンが含まれている一般的なものではない。

煙管は高校時代、骨董市で一目惚れして買ったものだ。磨いて綺麗にしてある。

火皿に薬草を詰め、マッチに火をつけて遠火で炙り、口の中でふかしてちょうどいい煙加減に調整する。

「フゥ〜っ。」

すると、シナモンのキツイ香りと煙が押し寄せてなんとも言い難い味。

美味しくも不味くもないが、クセになる。

4〜5回吸えたらいい方だ。あまり上手ではないので、すぐに火皿から灰を落とす。

 海は穏やかで、月の光がほのかに明るい。

心を浄化させるにはちょうどいい場所だ。

何も考えず、波の音だけが響き、ただただ時間が過ぎていく。

気づけば薄明るい空になり、夜が明けてきた。

(うん、大丈夫。わたし、今日からもがんばれる。大丈夫大丈夫。)

自分に言い聞かせる。

一走り万国村の方へ行こうと決め、夫に

[今、海に来てます。バイクです。もうすぐ帰るね。大丈夫だよ。」

と、連絡する。

返事を待たずに、わたしは走り出した。



2件のコメント


eco
eco
2020年4月14日

いつか煙管をカッコよく吸えるお姉さまになりたいものです。

時代に逆行するのもまた良き。

ロマンが伝わって何よりです。

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会長Tea
会長Tea
2020年4月14日

タバコとバイクの組み合わせはロマンです( ̄▽ ̄)

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