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〜春の匂い〜 第1章 手に入れた穏やかな日常

  • 執筆者の写真: eco
    eco
  • 2020年4月6日
  • 読了時間: 3分


 春が好きだ。

桜が散る。今日から4月になる。

年々、温暖化が進んでいると実感するのは、やはり植物や生き物たちをみて思う。

今年はふきのとうが、この地域では珍しく年始早々に採ることができた。

昔はあと1ヶ月ほど余裕があったのに、気づいた時には遅く、花が開ききっているのをみては落ち込んだ。

それでもめげずに、ふき味噌だけは作ったのだが…時期を逃したので思い通りの味にはならなかった。

 春が好きだ。でも、今の春は何か違う。

寒い寒い冬を越えて、凍えるような雪の日を越えて、やっと太陽の温もりを感じられるようになって、だんだんと生き物たちの活動が活発になって…という、絵に描いたような春はもう来ない。

ダラダラと肌寒い日が続き、こたつを出す間もなく春一番が来る。そんな昨今。

大好きな春は、歳を取るごとに思い出補正がかかり、現実との差に落胆するようになってしまった。

 ふと壁に目を向けると、視線の先には花雫と空蕾の写真に入り混じって、3輪の桜の写真が飾ってある。

1輪は可憐に咲き誇り、2輪は大人しく花咲く日を待っている。

わたしが中学時代の作品だ。あの頃は春が当たり前だった。野草も山菜も、おたまじゃくしが産まれるのも、季節の移り変わりの中の楽しみだった。

とりわけ好きだったのは“匂い”だ。春の匂いは生命に満ち溢れてワクワクする。

まるで冬眠から目覚め、新芽や桜の花びらを口いっぱい頬張りぴょんぴょんと跳ね回るシマリスのように、わたしはいそいそと草花を集めるのであった。

 そんなことを思い出していると、無性に春が恋しくなってきた。こんな時は“アレ”に頼るしかない。

毎年恒例の“アレ”とは、”スミレの砂糖漬け”だ。近所の山に自生しているスミレを摘んでよく洗い、卵白を塗ってから砂糖をふりかける。冷蔵庫で1週間ほど乾燥させれば完成だ。味は砂糖そのものだが、見た目の可愛さはピカイチ。

クッキーに乗せてよし、アイスに添えてよし、紅茶に入れてよし。万能のエディブルフラワーといえる。

(今日はレアチーズケーキにトッピングしよう。)

材料は簡単。クリームチーズ、生クリーム、水切り豆腐、レモン汁、ゼラチン。土台にはビスケットを砕いてバターと混ぜたものを使う。混ぜて冷やして待つ事1時間。

型から外してひっくり返すと、お姫様のスイーツのような出来栄えに感動を覚える。

 陽の当たる窓辺の机に、庭から摘んできたハルジオンとヒメジョオンを入れた花瓶と共に置く。撮影タイムだ。

ツルンとした表面の透明なゼリーは、陽に照らされて暖かな輝きを放つ。その奥にはスミレが花畑のように並んでおり、ひとひらそれぞれ個性豊かな顔立ちをしている。

(花雫と空蕾、なんて言うかな。ふふ。)

淡い期待を持ちつつ、夜ご飯のデザートにしようと冷蔵庫に戻した。

「フワァ〜。やべっ寝ちゃったよ、今何時?」

「ん、11時。おはよ。」

昨日は遅くまで子どもたちの相手をしていてくれたのだろう。夫は珍しく熟睡していたようだ。

「…なんか甘い匂いしない?気のせい?」

「ふふ、さっきデザート作ったんだ。夜ご飯の後のお楽しみ〜!」

「おっ、いいねぇ〜!えらい!」

「ありがとうー!お昼どうしよっか、食べたいものある?」

「すき焼きうどん。」

「でた、すき焼きうどん。またそれぇ〜?」

「いいじゃん美味しいんだもん。作って!」

「しょうがないなぁ!お肉買いに行かなきゃ〜!一緒にいこ。」

 まだまだ1日の始まり。今日はどんな日になるだろう。

新しい春に出会えることを祈って、わたしたちはスーパーへ買い出しに出かけた。






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